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外断熱工法では、建物自体をすっぽりと断熱材で覆いますので、躯体をヒートストレスから保護することができます。内断熱の躯体外壁が通年およそ30℃の温度変化を受けるのに対し、外断熱ではそれを10℃以下に抑えることができます。このことは熱膨張や熱収縮による躯体のクラック発生を防止します。
コンクリートの中性化は劣化の指標のひとつといわれており、鉄筋の腐食や、コンクリートのひび割れ・剥離を引き起こします。さらにそのひび割れから空気中の二酸化炭素や雨水が浸入し鉄筋の錆(酸化)が起こる等、複合的な要因により促進されると言われていますが、外断熱では断熱材により外壁を保護することができるため、中性化の防止に役立ちます。
外壁コンクリートの室外側からの中性化は、内断熱の場合約65年で鉄筋位置に達するのに対し、外断熱の場合約180年を要するという報告もあります。
引用:日本コンクリート工学会資料・北海道建築技術協会資料 -
気密化の進んだ現代の住宅では冬季の結露は当たり前のように発生します。結露するとカビが発生しやすくなり、カビを餌とするダニも繁殖します。ダニやカビはアレルギー疾患やシックハウス症候群の原因物質になるといわれており、健康面でも衛生面でも、発生を防止することが望まれます。
外断熱の壁は、冬場の冷たい外気の影響を受けにくく暖かい室内の温度に同調するため、温かい温度に保たれ、結露の発生を防ぐことが出来ます。空気は温かいほどたくさんの水蒸気を含むことができるので、湿度が低くなり、カビやダニの発生を防ぐことができます。 一方、内断熱の壁は外気温の影響を受けるため、冬場にはしばしば冷たい壁が暖かい室温に接する状態が発生し、結露やカビ・ダニの発生が起こりやすくなります。
また結露したとしても、結露水をふき取っておけば大丈夫だと考えられがちですが、壁の表面を拭いてきれいにしても、壁の中では結露が発生しカビが繁殖していることが多いのです。結露の発生そのものを抑制する方法を考える必要があります。
※ 湿度(相対湿度)=実際に含んでいる水蒸気の量/その温度で空気が水蒸気を含むことの出来る量×100%
下図は外断熱工法と内断熱工法の断熱材を一部欠損させて、壁体内の温度分布を比較したものです。 (冬期を想定) 図に示す通り、外気温を0℃、室温を18℃とした場合、外断熱では欠損部の室内側温度が14.7℃に対し、内断熱では5.5℃となります。内断熱の躯体温度は外気温に同調するため躯体温度が低く、ヒートブリッジがある場合は低温部が室内側に即、露呈します。壁の断熱性能が同じであっても、内断熱の場合のヒートブリッジは結露発生の危険性が大きくなるといえます。
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外断熱工法は内断熱工法と比べ冷暖房に要するエネルギーを節約できます。これは室内側に熱容量の大きいコンクリートがあり、室温が外気温に影響されないため、小さなエネルギーで効率よく冷暖房できるからです。その蓄熱効果により室内温度が安定し、快適な温熱環境を維持することができます。 下図における外断熱と無断熱のグラフ比較からも、外断熱の室内気温は冷暖房を切った後も、冬冷めにくく、夏温まりにくいことがわかります。
コンクリートは温度を溜める性質(蓄熱性)があります。この性質により、室内の熱はいったんコンクリートに蓄熱された後、ゆっくりと放出されていきます。このとき放出される熱は「輻射熱」と呼ばれるもので、暖房器具のように直接的に温かいものではありませんが、じんわりとひとの体に温もりを伝えるため、同じ室温でも輻射熱のあるほうが温かく感じるといわれています。
輻射熱:物体から発生した熱エネルギーが空間を通過して物体に当たり吸収され、再び熱に変わる伝搬現象