建築基準法の防火避難規定では、建築物における火災等に対する防火対策や非難の安全確保のための性能が定められています。
外断熱工法で有機系断熱材を用いる場合については、日本建築行政会議から取り扱いや運用方法に関する解説が出されています。
■耐火構造の外壁に木材、外断熱材等を施す場合の取扱いについて
告示に例示された耐火構造(準耐火構造、防火構造、準防火構造も同様)の外壁や軒裏に、表面材として木材などの可燃材料を貼る場合や、外壁に一定の性能を有する外断熱材を施す場合は、それぞれの構造に必要な性能を損ねないと判断できる。
なお、外壁の性能を損なわない外断熱としてはグラスウール、ロックウール等の不燃系の断熱材が考えられる。
また、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨コンクリート造又は鉄材で補強されたコンクリートブロック造、レンガ造、若しくは石造の外壁については、有機系の断熱材[JIS製品である発泡プラスチック(下表)等]を用いた外断熱を施すことも可能である。
<参考文献>
『建築物の防火避難規定の解説2012』(建築行政会議)
■エコサームの耐火性能について
エコサームは、鉄筋コンクリート造外壁に必要な耐火性能(非損傷性、遮熱性、遮炎性)を損ねないことを確認するための、耐火2時間構造試験に合格しています。
耐火認定番号 FP120BE-0130 取得年月日 平成25年12月2日
平成25年10月1日より、住宅の省エネルギー基準が改正されました。外皮(外壁や窓)の熱性能については、従来と同程度の水準が引き続き求められます。
※平成27年3月31日までは経過措置期間として、改正前の基準(平成11年基準)を用いることもできます。
非住宅建築物における外皮の熱性能基準について
外皮(外壁・窓など)の熱性能は、建物用途・地域区分に応じて定められた、PAL*(パルスター)と呼ばれる指標で評価します。
PAL*:各階の屋内周囲空間(ペリメーターゾーン)の年間熱負荷をペリメーターゾーンの床面積の合計で除して得た数値。単位は[MJ/m2年]
PAL*値の算出については、独立行政法人 建築研究所HPにて公開されている、算定用WEBプログラムをご活用ください。
http://www.kenken.go.jp/becc/index.html
■平成25年度改正のポイント
①一次エネルギー消費量基準の導入
外皮の熱性能基準に加え、設備も含めた建物全体の省エネルギー性能を評価するため、一次エネルギー消費量(J・ジュール)の基準が加わりました。
住宅 | 外皮 | 年間暖冷房負荷/熱損失係数等/仕様基準 |
暖冷房設備 | なし | |
換気設備 | ||
照明設備 | ||
給湯設備 |
(共同住宅の共用部分については、換気、照明、昇降機が対象)
外皮 | 外皮平均熱貫流率(住宅) 平均日射熱取得率(住宅) |
空調・暖冷房設備(外皮性能考慮) | 一次エネルギー消費量 |
換気設備 | |
照明設備 | |
給湯設備 | |
昇降機※ |
※非住宅建築物及び共同住宅が対象です。
②外皮の熱性能基準の見直し
外皮の熱性能は、従来のQ値(床面積あたりの熱損失量)とμ(ミュー)値(夏期日射 取得係数)から、住宅の規模や形状の違いによる影響を受けにくいUA値(外皮の平均熱貫流率)とη(イータ)A値(冷房期の平均日射熱取得率)による基準へと変更されました。
地域区分 | I | II | III | IV | V | VI |
熱損失係数の基準値[W/(m2・K)] | 1.6 | 1.9 | 2.4 | 2.7 | 3.7 | |
夏期日射取得係数の基準値 | 0.08 | 0.07 | 0.06 |
地域区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
外皮平均熱貫通率の基準値[W/(m2・K)] | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | - |
冷房期の平均日射熱取得率の基準値 | - | - | - | - | 3.0 | 2.8 | 2.7 | 3.2 |
③地域区分の変更
地域区分は従来のI~VIの6区分から、1~8の8区分となります。
参考 | 主な該当都道府県 | |
---|---|---|
H25年基準における地域区分 | H11年基準における地域区分 | 注:市町村ごとに地域区分を定めている。 |
1 | I | 北海道 |
2 | ||
3 | II | 青森県、岩手県、秋田県 |
4 | III | 宮城県、山形県、福島県、栃木県、新潟県、長野県 |
5 | IV | 茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県 |
6 | ||
7 | V | 宮崎県、鹿児島県 |
8 | VI | 沖縄県 |
■エコサームボード必要厚さ早見表
省エネルギー基準(平成25年基準)の外皮熱性能基準(各部位の仕様基準)に適合するためのエコサームボード(壁の断熱材)の厚さは地域区分に応じ、下表に掲げる数値以上の厚さが必要です。
エコサームボード λ=0.038W/m・K/鉄筋コンクリート造 外壁
東邦レオでは、エコサームボードの標準厚さを50mmとしています。これは省エネルギー基準(平成25年基準)を4割ほど上回る厚さです。
エネルギーに関する規制が、今後、より強化されていくことを見越して、厚さ70mmまでは一律のコストでご提供しております。
<参考文献>
『住宅の改正省エネルギー基準の建築主の判断基準と設計・施工指針の解説』(一般社団法人 日本サステナブル建築協会)
■熱橋部の断熱補強 規制緩和について
省エネルギー基準(平成11年基準)において、鉄筋コンクリート造等の構造熱橋部には熱損失防止や表面結露防止の必要性から、断熱補強が規定されています。
しかし、断熱補強は施工手間や意匠上の観点から敬遠される傾向にあり、平成22年4月の基準改正時、住宅全体に占める熱損失量や表面結露に対する影響が少ないことが明らかとなったIII・IV・V地域を対象に、条件付で断熱補強を省略できる規定が追加されました。(下表参照)
併せて、私たちの二次元伝熱シミュレーションサービスをご利用いただくことで、断熱補強を省略した場合の熱橋の影響について、詳しく検証することができますので是非ご活用ください。
※省エネルギー基準(平成11年基準)の為、平成27年3月31日まで適用
緩和規定1(外断熱工法)
次のいずれかに該当する場合は、断熱補強を省略することができます。
- ア
- 屋根又は天井及び壁の断熱材の熱抵抗の値を、基準値×1.3 以上、かつ、開口部(玄関ドア等を除く。)の熱貫流率がIII地域:2.91以下、IV・V地域:4.07以下
- イ
- III、IV及びV地域において、屋根又は天井及び壁の断熱材の熱抵抗の値を、基準値×1.5以上
- ウ
- 壁の断熱材の熱抵抗の値を、基準値×1.6以上とし、かつ、開口部(玄関ドア等を除く。)の熱貫流率が、III地域:2.91以下、IV・V地域:4.07以下
緩和規定2(III、及びIV・V地域:外断熱工法)
次の式によって算出されるY が、次の表に掲げる数値以上となる場合は、それぞれ該当する断熱補強を省略することができます。
Y=6+17×Cr+20×Cw-12×Um(III地域)
Y=20+17×Cr+20×Cw-12×Um(IV・V地域)
Cr:屋根又は天井に施工する断熱材の熱抵抗の値を、当該部位の基準値で除した値
Cw :壁に施工する断熱材の熱抵抗の値を、当該部位の基準値で除した値
Um :開口部(玄関ドア等を除く。)の熱貫流率
構造熱橋部の断熱補強 省略のための判定用数値
<参考文献> 『省エネルギー対策等級4技術基準』(住宅金融支援機構)
参考資料
- 「建築物の防火避難規定の解説2012」(日本建築行政会議)
- http://shop.gyosei.jp/index.php?main_page=product_info&products_id=7472
- 「平成25年 省エネルギー基準に準拠した算定・判断の方法及び解説I・II」
(国土交通省国土技術政策総合研究所・独立行政法人建築研究所) - http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk4_000005.html
- http://www.kenken.go.jp/becc/
- 「住宅の改正省エネルギー基準の建築主の判断基準と設計・施工指針の解説」
(一般社団法人 日本サステナブル建築協会) - http://lowenergy.jsbc.or.jp/top/
- 「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針」(国土交通省)
- http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk4_000005.html
- 「省エネルギー対策等級4技術基準」(住宅金融支援機構)
- http://www.flat35.com/tetsuduki/flat35s/energy.html